新型コロナウイルス検出に使われているPCRについて
こんにちは。うちPです。
4日目、脱3日坊主!
昨日書こうと思っていた「PCR」についてです。
どうやら一般的ではない単語の場合、言葉の解説のページに飛べるようになっているものがあるみたいですね。
新型コロナウイルスの検出に用いられているPCR法は「リアルタイムRT-PCR」が用いられているようです。
(国立感染症研究所 検査マニュアル Q&A より)
ということで、今回は「PCR」「RT-PCR」「リアルタイムRT-PCR」について、大雑把に書いていきたいと思います。
今回も、前回の「セントラルドグマ」同様に、なんとなくこんなものかと思っていただけたら嬉しいです。(それにしてはマニアックな内容ですが。。。)
目次
PCR
PCRはPolymerase Chain Reactionの略で、日本語ではポリメラーゼ連鎖反応です。
一言で言ってしまえば、狙ったDNAを増やす方法です。
バイオ系の研究ではよく使うもので、非常に画期的な発明でした。
PCR法の開発者であるキャリー・マリス博士はノーベル賞を受賞しています。
細胞が分裂をして増える際には、DNA配列も正確に受け継がなければいけません。
その時に、DNAの複製を行う酵素がDNAポリメラーゼです。PCRでは、このDNAポリメラーゼによってDNAを増幅しています。
増やしたいDNA(テンプレートDNA)とDNAポリメラーゼ、反応に必要な試薬を混ぜ、PCR装置(サーマルサイクラー)にセットするだけです。
装置は、温度の上げ下げをします。「PCR」の言葉の解説に簡単な原理が載っているので、興味がある方は見てみてください。
(いつか、私も記事を書くかもしれません。)
サーマルサイクラーにセットすると、
元となるDNAの必要な部分だけを、倍々で増幅してくれます。
1回の反応でDNAは2倍になります。
私がPCRを実験で使用するときは、増やしたいDNAの種類にもよりますが、大体30サイクル行っています。
30サイクル行うと約10億倍(2の30乗)になってくれます。
増やすDNAの大きさや、使用するDNAポリメラーゼの種類によって、反応時間が異なりますが、数十分から数時間です。(幅が大きいです。。。)
ちなみに、Amazonにサーマルサイクラーが売っていたので、広告を載せてみますね。
刑事ドラマとかでよく出てくるDNA鑑定では、PCRを用いて15ヶ所のDNAを増幅し、調査することにより、約4兆7000億人に一人の確率で個人の特定を行っています。
(平成20年度警察白書 特集 第3節 第2項、平成30年度警察白書 第2部 第2章 第6節 2より)
また、テンプレートDNAの中に、特定のDNA配列があるのかどうかを検出することも可能です。
目的のDNA配列が増えるようなPCRを行い、DNAが増えていれば「あるだろう」、増えていなければ「無いだろう」ということが分かります。
残念ながら、「ある」「無い」とは断言できません。。。
テンプレートDNAの配列によっては違う部分が増えてしまったり、逆に増えにくかったりもするのです。。。
また、テンプレートDNAがとても少ない場合、増幅できても、検出が出来ないといったこともあります。
これが、偽陰性が出てしまう理由です。
RT-PCR
今回蔓延している新形コロナウイルスは、DNAではなく、RNAを持っているウイルスなんです。
つまり、普通のPCRでは増幅することが出来ません。。。
ではどうするか。
RNAからDNAにしてしまおう!
というわけです。
前回、セントラルドグマは「”基本的に”逆向きにはなりません。」と言いましたが、例外があります。
世の中には、RNAからDNAを合成することが出来る酵素がいます。
この酵素を用いて、RNAからDNAへ「逆転写」を行ってから、PCRを行うものが
「RT-PCR(reverse transcription PCR)」
です。
逆転写後は、普通のPCRと同じです。
リアルタイムRT-PCR
リアルタイムPCRとは、専用のPCR装置を用いて、PCRの1サイクルごとに、どれだけのDNAがあるのかを調べるものです。
PCRでDNAを増やしながら、同時に検査結果を見ることが可能で、DNAの有無をいち早く検出できます。
新型コロナウイルスの検出では、RT-PCRと組み合わせた「リアルタイムRT-PCR」が用いられています。
まとめ
長くなりましたがまとめると
・PCRはDNAを増やすもの。
・RT-PCRは、RNAに対してPCRを行うもの。
・リアルタイムPCRは、DNAの増幅と同時に量をはかるもの。
・リアルタイムRT-PCRは、RT-PCRとリアルタイムPCRを組み合わせたもの。
ということになります。
というわけでPCRについて長々と語ってみました!